「遺言書を作っておいた方がよさそうだけれど、自分で書くのと公証役場で作るのは何が違う?」
「自筆証書遺言と公正証書遺言、自分の場合はどちらを選べばいい?」
遺言書について調べ始めると、よく目にするのが**「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」**です。
どちらも法律で定められた遺言の方式ですが、作り方や費用、保管方法、亡くなった後の手続きなどに違いがあります。
簡単にいうと、
- 自筆証書遺言:自分で作成でき、費用を抑えやすい
- 公正証書遺言:公証人が作成に関与し、形式上の不備や紛失などのリスクを抑えやすい
という特徴があります。
ただし、単純に「公正証書遺言の方がよい」「自筆証書遺言なら簡単」と決められるものではありません。
財産の内容や家族関係、遺言を作る目的によって、適した方法は変わります。
この記事では、自筆証書遺言と公正証書遺言の違い、メリット・デメリット、どちらを選ぶべきかをわかりやすく解説します。
※本記事は2026年8月時点の制度に基づいています。
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公正証書遺言と自筆証書遺言の違いを一覧で比較
まずは、主な違いを確認してみましょう。
| 比較項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成する人 | 原則として本人が自書 | 公証人が作成に関与 |
| 証人 | 不要 | 原則2人以上必要 |
| 費用 | 自分で作れば基本的に不要 | 財産額などに応じて公証人手数料が必要 |
| 保管 | 自宅など、または法務局 | 公証役場で原本を保管 |
| 紛失・改ざん | 自宅保管ではリスクあり | リスクを抑えやすい |
| 形式上の不備 | 自分で確認する必要あり | 公証人が関与するため生じにくい |
| 家庭裁判所の検認 | 自宅保管の場合は必要 | 不要 |
| 法務局保管制度 | 利用できる | ― |
| 作り直し | 比較的行いやすい | 改めて公正証書を作成する必要がある |
| 向いているケース | 比較的シンプルな遺言など | 複雑な相続、確実性を重視したい場合など |
なお、自筆証書遺言には法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用する方法もあります。
この制度を利用すると、自筆証書遺言の原本と画像データが法務局で保管され、死亡後の家庭裁判所による検認も不要になります。現在は「自宅で保管する自筆証書遺言」と「法務局に預ける自筆証書遺言」を分けて考えることが重要です。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言とは、遺言者本人が自分で作成する遺言書です。
原則として、遺言書の本文・日付・氏名を本人が自書し、押印する必要があります。
一方、財産目録については、パソコンで作成したものや預金通帳・不動産の登記事項証明書などの写しを利用することもできます。その場合は、財産目録の各ページに署名・押印するなど、法律上の方式を守る必要があります。
自筆証書遺言のメリット
1.費用を抑えて作成できる
自分で作成するだけであれば、公証人に支払う作成手数料はかかりません。
「まず自分の意思を遺言として残しておきたい」という場合に取り組みやすい方法です。
2.自分のタイミングで作成・見直しができる
自筆証書遺言は、自宅などで自分のタイミングで作成できます。
財産状況や家族構成が変わったときにも、新たな遺言書を作成することが可能です。
3.証人が必要ない
公正証書遺言と異なり、作成時に証人を用意する必要はありません。
遺言の内容を周囲に知られずに作成しやすいことも特徴です。
自筆証書遺言のデメリット
1.方式を間違えると無効になる可能性がある
遺言書には法律で定められた方式があります。
たとえば、
- 日付が正しく記載されていない
- 本文を本人が自書していない
- 訂正方法が適切ではない
など、形式に問題があると遺言の全部または一部が無効となる可能性があります。
「内容を書けば遺言書になる」というものではないため注意が必要です。
2.自宅保管では紛失・改ざん・発見されないリスクがある
自宅で保管している場合、
- 遺言書をなくしてしまう
- 家族に発見されない
- 誤って処分される
- 書き換えや隠匿をめぐって問題になる
といったリスクがあります。
政府広報でも、自筆証書遺言について紛失や改ざん、隠匿などのおそれがあることが案内されています。
3.自宅保管の場合は家庭裁判所の「検認」が必要
自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、原則として家庭裁判所で検認という手続きが必要になります。
検認は、遺言書の存在や状態を確認し、その後の偽造・変造を防ぐための手続きです。
相続人にとっては、相続開始後に行う手続きが一つ増えることになります。
自筆証書遺言は「法務局に保管する」という選択肢もある
自筆証書遺言のデメリットを軽減する仕組みとして、2020年から自筆証書遺言書保管制度が始まっています。
作成した自筆証書遺言を法務局に預ける制度です。
2026年現在、遺言書の保管申請手数料は1件3,900円です。
法務局に保管するメリット
主なメリットは、
- 遺言書の原本・画像データを法務局で保管してもらえる
- 紛失や改ざんなどを防ぎやすい
- 自筆証書遺言の方式について外形的なチェックを受けられる
- 遺言者が亡くなった後の家庭裁判所による検認が不要
- 一定の場合に相続人などへの通知制度を利用できる
ことです。
そのため、
「費用を抑えて自分で遺言書を作りたいけれど、自宅に置いておくのは心配」
という場合には有力な選択肢になります。
法務局が遺言内容まで確認してくれるわけではない
注意したいのがこの点です。
法務局では、遺言書が自筆証書遺言の方式に適合しているかについて外形的な確認を行いますが、遺言内容の法的な有効性まで保証してくれる制度ではありません。
たとえば、
「この財産の分け方で希望どおりの結果になるか」
「将来トラブルにならない内容か」
といったところまで判断してもらえるわけではありません。
自分で作成する場合でも、内容に不安があれば事前に専門家へ相談することをおすすめします。
公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思を確認し、その内容を公正証書として作成する遺言です。
原則として証人2人以上の立会いのもとで作成され、遺言書の原本は公証役場で保管されます。
公正証書遺言のメリット
1.形式上の不備による無効リスクを抑えやすい
公正証書遺言では、法律の専門家である公証人が作成に関与します。
そのため、自分だけで作成する自筆証書遺言と比較すると、方式上の不備によって遺言が無効となるリスクを抑えやすいことが大きなメリットです。
ただし、公正証書であれば将来一切争われないという意味ではありません。
本人の意思能力や遺言内容などをめぐって争いになる可能性まで完全になくなるわけではないため、家族関係や財産状況を踏まえて内容を検討することが重要です。
2.紛失・改ざんの心配が少ない
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。
そのため、
「家の中で遺言書が見つからない」
「誰かに破棄されてしまった」
といったリスクを大きく抑えることができます。
3.家庭裁判所の検認が不要
公正証書遺言は、遺言者が亡くなった後に家庭裁判所で検認を受ける必要がありません。
相続開始後の家族の手続きを減らせる点もメリットです。
4.自分で文字を書くことが難しい場合にも対応しやすい
高齢や病気などにより、自分で長い文章を書くことが難しい場合でも、公正証書遺言を利用できる場合があります。
また、病気などの事情によって公証役場まで行けない場合には、公証人に出張してもらって作成できるケースもあります。
公正証書遺言のデメリット
1.費用がかかる
公正証書遺言を作成する場合には、公証人に支払う手数料が必要です。
手数料は一律ではなく、遺言によって財産を受け取る人や財産の価額などによって計算されます。
2025年10月に公証人手数料が改定されており、2026年現在は改定後の料金体系が適用されています。
さらに行政書士などの専門家に原案作成や必要書類の収集などを依頼する場合には、別途報酬が必要になります。
2.証人を2人用意する必要がある
公正証書遺言の作成には、原則として証人2人以上が必要です。
また、誰でも証人になれるわけではなく、推定相続人や受遺者、その配偶者・直系血族など、法律上証人になれない人もいます。
適切な証人を自分で用意するのが難しい場合には、公証役場や専門家へ相談する方法もあります。
3.自筆証書遺言より準備に手間がかかる
財産資料など必要な書類を準備し、公証人との打ち合わせを行ったうえで作成するため、自分で書くだけの自筆証書遺言と比べると準備には一定の時間がかかります。
自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらを選ぶべき?
ここまで違いを見てきましたが、
「では、自分はどちらを選べばいいの?」
というのが一番気になるところだと思います。
一律にどちらが優れているというものではありません。
大切なのは、費用の安さだけではなく、本人の意思をきちんと実現できるか、亡くなった後に家族が困らないかまで考えて選ぶことです。
自筆証書遺言を検討しやすいケース
たとえば、
- 財産や家族関係が比較的シンプル
- まずは遺言を作っておきたい
- 費用をなるべく抑えたい
- 今後内容を書き直す可能性が高い
- 自分で遺言書を作成・管理できる
- 法務局の保管制度を利用したい
という方です。
自筆証書遺言の場合でも、自宅保管だけではなく、法務局の保管制度を利用することで安心感を高めることができます。
公正証書遺言を検討したいケース
一方、
- 相続人が多い
- 不動産など財産関係が複雑
- 特定の人に特定の財産を残したい
- 相続人以外の人へ財産を残したい
- 家族間の相続トラブルが心配
- 遺言書の紛失や形式上の不備をできるだけ避けたい
- 高齢や病気により自筆が負担になっている
- 亡くなった後の家族の手続きをできるだけ減らしたい
という場合には、公正証書遺言を検討する価値があります。
特に、
「遺言書を作る目的が、将来家族が困らないようにすること」
であれば、作成時の費用だけでなく、相続が始まった後まで考えて方法を選ぶことが重要です。
遺言書は「作ったら終わり」ではありません
自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、一度作ったら一生そのままでよいとは限りません。
時間が経てば、
- 預貯金が増減する
- 不動産を売却・購入する
- 家族が亡くなる
- 孫が生まれる
- 介護が必要になる
- 家族との関係性が変化する
など、状況は変わっていきます。
せっかく遺言を作っても、実際の財産や本人の希望と内容が合わなくなれば、思っていたような相続にならない可能性があります。
そのため、遺言書を作成した後も、人生や家族に大きな変化があったタイミングで内容を確認することをおすすめします。
遺言書を作る前に家族のことを整理してみる
遺言書というと、
「財産を誰に渡すか」
という話だけに思われがちです。
しかし実際には、
- これからどこで暮らしたいか
- 介護が必要になったらどうしたいか
- 誰にサポートしてもらいたいか
- 財産をどのように管理していきたいか
- 最後に誰へ何を残したいか
といった、これからの人生全体を整理することにもつながります。
いきなり家族に「相続の話をしよう」と言うと、話しづらい場合もあります。
「最近、通院が増えてきたね」
「これからも家で暮らしたい?」
「何かあったとき、誰に連絡してほしい?」
そんな日常の話から少しずつ希望を確認しておくことも、大切な準備の一つです。
遺言書を作ること自体をゴールにするのではなく、ご本人の想いを整理し、それを家族へつないでいくための手段の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ|費用だけでなく「家族が困らないか」で選びましょう
公正証書遺言と自筆証書遺言には、それぞれメリット・デメリットがあります。
自筆証書遺言は、
「自分で手軽に作成でき、費用を抑えやすい」
ことが大きな特徴です。
一方、公正証書遺言は、
「公証人が作成に関与し、形式上の不備や紛失などのリスクを抑えやすい」
という特徴があります。
また現在は、自筆証書遺言を法務局に預ける「自筆証書遺言書保管制度」もあるため、
自筆証書遺言=自宅に置いておくしかない
わけではありません。
どの方法が適しているかは、
- 財産の内容
- 家族構成
- 将来の相続トラブルの可能性
- ご本人の健康状態
- 遺言で実現したいこと
などによって変わります。
迷ったときは、遺言書を書く前に一度状況を整理してみることをおすすめします。
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「親に遺言の話をしたいけれど、何から話せばいいかわからない」
「まだ遺言書を作る段階なのかわからない」
といった段階からでも大丈夫です。
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