子どものいない夫婦の相続はどうなる?相続人と遺言書が必要なケースを解説

子どものいない夫婦の相続はどうなる?相続人と遺言書が必要なケースを解説 未分類

「子どもがいない夫婦の場合、夫や妻が亡くなったら配偶者がすべて相続するのでは?」

「夫の兄弟にも相続する権利があると聞いたけれど、本当?」

「夫婦2人だけなら遺言書は作らなくても大丈夫?」

子どものいない夫婦の相続では、残された配偶者が必ずすべての財産を相続できるとは限りません。

亡くなった方の親が存命であれば「配偶者と親」、親などの直系尊属がいなければ「配偶者と兄弟姉妹」が相続人になる場合があります。

兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子である甥・姪が相続人になることもあります。

そのため、

「自宅や預貯金など、自分の財産はすべて夫・妻に残したい」

と考えている子どものいない夫婦では、元気なうちに遺言書を作成しておくことが重要なケースがあります。

この記事では、子どものいない夫婦の相続人や法定相続分、遺言書を作った方がよい理由についてわかりやすく解説します。

※この記事では、亡くなった方に実子・養子や、その代襲相続人となる孫などがいないケースを前提に解説します。前婚の子どもなどがいる場合には相続関係が異なります。

※本記事は2026年8月時点の法令・制度に基づいています。

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子どものいない夫婦でも配偶者がすべて相続するとは限らない

民法では、亡くなった方の配偶者は常に相続人になります。

一方、配偶者以外の血族には相続順位があります。

第1順位は子などの直系卑属、第2順位は父母などの直系尊属、第3順位は兄弟姉妹です。

そのため、亡くなった方に子どもがいない場合には、次のようになります。

家族構成相続人法定相続分
子なし・親なども兄弟姉妹もいない配偶者のみ配偶者100%
子なし・親がいる配偶者+父母など配偶者2/3、父母など1/3
子なし・親などもいない・兄弟姉妹がいる配偶者+兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

政府広報でも、配偶者と父母が相続人の場合は配偶者が3分の2、父母が3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1と案内されています。

ただし、法定相続分は必ずその割合で財産を分けなければならないという意味ではありません。

遺言がない場合でも、相続人全員が合意すれば、たとえば「すべて配偶者が相続する」という遺産分割を行うことはできます。

問題は、相続人全員との話し合いが必要になる可能性があることです。

ケース1|夫が亡くなり、夫の両親が存命の場合

たとえば、夫婦に子どもがおらず、夫が亡くなったとします。

夫の父母が存命の場合、相続人は、

妻+夫の父母

です。

法定相続分は、

  • 妻:3分の2
  • 夫の父母:合計3分の1

となります。父母が2人とも存命であれば、原則として父と母が6分の1ずつです。

たとえば夫の相続財産が3,000万円なら、法定相続分で考えると、

妻:2,000万円
父:500万円
母:500万円

となります。

もちろん父母が、

「息子の財産はすべてお嫁さんが相続していい」

と合意すれば、そのような遺産分割も可能です。

しかし、必ずそのように合意してもらえるとは限りません。

特に財産の多くを自宅不動産が占めている場合には、現金だけで調整するのが難しくなることもあります。

ケース2|夫の両親は亡くなっていて兄弟姉妹がいる場合

子どもがおらず、父母などの直系尊属もすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が第3順位の相続人になります。

たとえば、



夫の弟・妹

という家族構成で夫が亡くなった場合、

妻+夫の兄弟姉妹

が相続人になります。

法定相続分は、

  • 妻:4分の3
  • 兄弟姉妹:合計4分の1

です。

夫婦で長年一緒に生活してきた妻からすると、

「夫婦で築いてきた財産なのに、なぜ夫の兄弟にも相続権があるの?」

と感じるかもしれません。

しかし、遺言書がない場合には、このような相続関係になる可能性があります。

兄弟姉妹が亡くなっていたら甥・姪が相続人になることも

さらに注意したいのが代襲相続です。

本来相続人になるはずだった兄弟姉妹が、本人より先に亡くなっている場合には、その兄弟姉妹の子である甥・姪が相続人になることがあります。

政府広報でも、本来相続人となる人が相続開始時にすでに亡くなっている場合などには、一定のルールによりその人の子などが代わって相続人になることが案内されています。

つまり、夫婦と義理の兄弟姉妹との交流がほとんどなかったとしても、

夫が亡くなった後に、妻と夫の甥・姪が相続について話し合わなければならない

ケースも考えられます。

兄弟姉妹が多い家庭では、相続人の人数が増える可能性もあります。

「うちは子どもがいない」の意味には注意が必要

ここで一つ確認しておきたいポイントがあります。

現在の夫婦の間に子どもがいなくても、

亡くなった方に前の結婚で生まれた子どもがいる場合

には、その子どもは第1順位の相続人になります。

また、養子も法律上の子として相続人になる場合があります。

そのため、

「今の夫婦に子どもがいないから、親や兄弟姉妹が相続人になる」

とは限りません。

相続について考えるときは、現在一緒に暮らしている家族だけでなく、戸籍上の親族関係まで確認することが重要です。

子どものいない夫婦は遺言書を作った方がいい?

すべての子どものいない夫婦に遺言書が必須というわけではありません。

しかし、

「自分が先に亡くなったら、財産はすべて配偶者に残したい」

という希望がある場合には、遺言書を検討する意味は大きいでしょう。

法務局も「夫婦間に子どもがいない人」を遺言書の作成を推奨するケースの一つとして案内しています。特に兄弟姉妹が相続人になるケースでは、遺言によって残された配偶者との遺産分割協議を避けられることや、兄弟姉妹には遺留分がないことを理由として挙げています。

兄弟姉妹には「遺留分」がない

子どものいない夫婦が遺言書を考えるうえで、非常に重要なのが遺留分です。

遺留分とは、一定の相続人について、遺言などによっても奪うことのできない最低限の取り分です。

しかし、兄弟姉妹には遺留分がありません。

政府広報でも、兄弟姉妹には遺留分がないことが明示されています。

たとえば、

「私の全財産を妻に相続させる」

という有効な遺言書を夫が残していて、夫の相続人が妻と兄弟姉妹だった場合を考えます。

兄弟姉妹には遺留分がないため、

「本来4分の1が法定相続分だったから、その分を支払ってほしい」

と遺留分侵害額を請求することはできません。

兄弟姉妹に代わって相続人になる甥・姪についても、遺留分はありません。

そのため、配偶者に財産を残したい子どものいない夫婦では、遺言書の効果が特に大きいケースがあります。

親が相続人の場合は遺留分に注意

一方、夫または妻の父母などが相続人になる場合は事情が異なります。

父母などの直系尊属には遺留分があります。

配偶者と父母が相続人の場合、遺留分全体は相続財産の2分の1です。これを法定相続分に応じて計算すると、父母側の遺留分は合計で相続財産の6分の1となります。

たとえば、

「全財産を妻に相続させる」

という遺言書を作っても、夫の父母が存命であれば、父母から遺留分侵害額を請求される可能性があります。

したがって、

親が相続人になるケースと、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、遺言書を作った場合の効果が異なる

ことを理解しておく必要があります。

自宅がある夫婦ほど遺言を検討したい

子どものいない夫婦で特に注意したいのが、不動産です。

たとえば夫名義の自宅に夫婦で暮らしていて、夫が先に亡くなったとします。

相続人が妻と夫の兄弟姉妹で、遺言書もなかった場合、自宅も相続財産の一部として遺産分割の対象になります。

妻としては、

「これまでどおり自宅に住み続けたい」

と思っていても、他の財産が少なければ、相続人との調整が必要になる可能性があります。

不動産は預貯金のように簡単に分割できないため、

「自宅は配偶者に残したい」

という希望が明確なのであれば、元気なうちから相続方法を整理しておくことが大切です。

なお、不動産を相続した場合には相続登記も必要です。2024年4月から相続登記は義務化されており、原則として相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。

夫婦で遺言を作るなら「それぞれ」が作成する

夫婦で、

「夫が先に亡くなったら妻へ」

「妻が先に亡くなったら夫へ」

とお互いに財産を残したい場合もあるでしょう。

その場合、夫婦で1枚の遺言書を共同作成するのではなく、それぞれが自分の遺言書を作成します。

法務局が公開している夫婦向けの遺言書文例でも、夫と妻の遺言は各自作成する必要があると案内されています。

たとえば、

夫の遺言書
「私の財産を妻○○に相続させる」

妻の遺言書
「私の財産を夫○○に相続させる」

というように、それぞれ作成します。

配偶者も先に亡くなっていた場合を考えておく

子どものいない夫婦が遺言書を作る際には、

「配偶者が自分より先に亡くなっていたらどうするか」

も考えておきたいポイントです。

たとえば、

「全財産を妻に相続させる」

とだけ書いていたものの、妻が先に亡くなっていた場合、その後の財産を誰に渡したいのかが明確でなくなります。

夫婦ともに亡くなった後、

  • 兄弟姉妹や甥・姪へ残す
  • 特にお世話になった人へ残す
  • 特定の団体へ寄付する

など、本人によって希望は異なります。

法務局の遺言書文例にも、配偶者が先または同時に死亡した場合に誰へ財産を相続させるかをあらかじめ指定する例が示されています。

夫婦2人の生活だけではなく、2人とも亡くなった後まで考えておくことが大切です。

子どものいない夫婦が今から確認したいこと

相続対策というと、すぐに遺言書を作らなければならないように感じるかもしれません。

まずは夫婦で、

  1. どのような財産があるか
  2. 自宅は誰の名義か
  3. お互いの親は存命か
  4. 兄弟姉妹や甥・姪はいるか
  5. 前婚の子や養子などはいないか
  6. 自分が先に亡くなったら誰に何を残したいか
  7. 2人とも亡くなった後は財産をどうしたいか

を整理してみることから始めてみましょう。

そのうえで、

「自分の希望と、遺言書がなかった場合の相続結果が一致しているか」

を確認します。

一致していなければ、遺言書などの準備を検討するタイミングです。

自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらがいい?

遺言書を作る場合、代表的な方法には自筆証書遺言公正証書遺言があります。

自筆証書遺言は、自分で作成でき、費用を抑えやすいことがメリットです。

一方、公正証書遺言は公証人が作成に関与し、原本も公証役場で保管されるため、方式上の不備や紛失などのリスクを抑えやすい特徴があります。

どちらが適しているかは、

財産の内容、相続人の人数、家族関係、本人の健康状態などによって異なります。

詳しくは、

「公正証書遺言と自筆証書遺言の違い|メリット・デメリットとどちらを選ぶべきか」

の記事もあわせてご覧ください。

まとめ|子どものいない夫婦こそ相続人を一度確認しておこう

子どものいない夫婦では、

「自分が亡くなれば当然すべて夫・妻が相続する」

とは限りません。

子どもがいない場合、

親などの直系尊属がいれば、

配偶者3分の2・父母など3分の1

親などもいなければ兄弟姉妹が相続人となり、

配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1

が法定相続分となります。

兄弟姉妹が亡くなっていれば、甥・姪が代襲相続人になるケースもあります。

一方、兄弟姉妹には遺留分がないため、「財産をすべて配偶者に残したい」という希望がある場合には、遺言書を作成しておくことが有効なケースがあります。

特に、

「自宅を配偶者に確実に残したい」

「配偶者と兄弟姉妹に遺産分割の話し合いをさせたくない」

という方は、一度相続関係を整理してみることをおすすめします。

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「子どもがいないので、夫にすべて財産を残したい」

「自分が亡くなったら誰が相続人になるのかわからない」

「兄弟姉妹と配偶者が相続について話し合うことになるのを避けたい」

といった段階からでもご相談いただけます。

単に遺言書を作成するだけでなく、現在の家族関係や財産、これからの暮らしについて整理したうえで、必要な準備を一緒に考えます。

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