「任意後見を利用すると、結局いくらかかるの?」
「契約するときだけ費用を払えばいい?」
「任意後見人や監督人には毎月報酬を支払う必要がある?」
将来の認知症などに備えて任意後見制度を検討するとき、気になるのが費用です。
任意後見にかかる費用は、大きく分けると次の3つがあります。
- 任意後見契約を結ぶときにかかる費用
- 任意後見人に支払う報酬
- 任意後見監督人に支払う報酬
特に注意したいのが、任意後見契約を結んだ時点ですべての費用が終わるわけではないことです。
本人の判断能力が低下し、任意後見が実際に始まると、任意後見人への報酬に加え、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」への報酬が発生する場合があります。
この記事では、2026年8月時点の制度をもとに、任意後見にかかる費用を「契約するとき」「制度を開始するとき」「開始した後」に分けてわかりやすく解説します。
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任意後見にかかる費用は大きく3種類
まず全体像を見てみましょう。
| タイミング | 主な費用 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 契約時 | 公正証書作成・登記など | 法令等で決められた手数料 |
| 契約時 | 専門家への依頼費用 | 事務所ごとに異なる |
| 任意後見開始時 | 任意後見監督人選任の申立費用 | 裁判所の手数料等 |
| 開始後 | 任意後見人への報酬 | 任意後見契約で決める |
| 開始後 | 任意後見監督人への報酬 | 家庭裁判所が決める |
ポイントは、
「契約しただけの段階」と「実際に任意後見が始まった後」で、かかる費用が違う
ということです。
まず、任意後見制度の仕組みから簡単に確認しましょう。
任意後見制度とは?
任意後見制度とは、本人に十分な判断能力があるうちに、
「将来、自分で判断することが難しくなったとき、この人に支援してもらいたい」
という人を自分で選び、財産管理や生活・介護に関する手続きなどを任せる契約をしておく制度です。
任意後見契約は、公証人が作成する公正証書で締結する必要があります。
そして契約した時点では、任意後見はまだ始まりません。
その後、認知症などによって本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約の効力が生じます。
したがって、
元気なうちに契約
↓
将来、判断能力が低下
↓
家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申立て
↓
監督人が選任される
↓
任意後見がスタート
という流れになります。
費用も、この流れに沿って考えると理解しやすくなります。
任意後見契約を結ぶときにかかる費用
任意後見契約は公正証書で作成するため、公証役場などに支払う実費が必要です。
2026年8月現在、日本公証人連合会が案内している主な費用は次のとおりです。
公正証書作成手数料:1契約13,000円
任意後見契約公正証書の作成手数料は、1契約につき13,000円です。
公正証書を書面で作成した場合、一定の枚数を超えると1枚につき300円が加算されます。
なお、以前の資料などには11,000円と掲載されているものがありますが、公証人手数料は2025年10月に改定されています。
2026年現在は、13,000円が現行の基本手数料です。
登記嘱託手数料:1,600円
任意後見契約を締結すると、その内容が法務局で登記されます。
公証人から法務局へ登記を依頼するための登記嘱託手数料として1,600円が必要です。
法務局へ納める収入印紙代:2,600円
任意後見契約の登記には、別途2,600円の収入印紙代がかかります。
正本・謄本、郵送料など
このほか、
- 公正証書の正本・謄本等の作成費用
- 法務局への書留郵便料
などが必要になります。
したがって、専門家への依頼報酬を除いた公証役場・登記関係の費用だけでも、13,000円+1,600円+2,600円+証書代・郵送費などが必要になります。
また、病気などで公証役場へ行くことができず、公証人に病院や自宅などへ出張してもらう場合には、手数料の加算や日当、交通費が発生する場合があります。
行政書士などの専門家に依頼する場合は別途費用がかかる
任意後見契約を自分たちだけで準備するのではなく、行政書士などの専門家へ相談する場合には、別途報酬がかかります。
たとえば、
- 本人の希望の整理
- 財産状況の整理
- 任意後見契約の内容検討
- 公証役場との調整
- 必要書類の準備
- 財産管理等委任契約などとの組み合わせの検討
といったサポートです。
専門家への依頼費用には全国一律の料金があるわけではなく、事務所や依頼内容によって異なります。
そのため、
「任意後見契約○万円」だけで比較するのではなく、どこまでサポートに含まれているか
を確認することが大切です。
任意後見人への報酬はいくら?
次に、任意後見が始まった後の費用です。
任意後見人に支払う報酬額について、法律で一律の金額が決められているわけではありません。
本人と任意後見受任者が任意後見契約を結ぶ際に、報酬を支払うかどうか、支払う場合はいくらにするかを決めます。
日本公証人連合会も、任意後見人の報酬については本人と任意後見受任者との話し合いで決め、親族が任意後見人になる場合には無報酬とする例も多いと案内しています。
つまり、
家族・親族が任意後見人になる場合
契約内容によっては無報酬とすることもできます。
ただし、
「家族だから無料にすればいい」
と単純に決めるのではなく、実際にどのような仕事をお願いするのかまで考えておくことが重要です。
任意後見人には、契約内容によって、
- 預貯金の管理
- 各種支払い
- 不動産に関する手続き
- 介護サービスの契約
- 入院・施設入所に関する契約
- 行政機関への手続き
など、長期間にわたる事務を任せる可能性があります。
家族に大きな負担がかかる場合には、報酬を設定することも選択肢です。
専門家を任意後見人にする場合
行政書士、司法書士、弁護士などの専門家を任意後見受任者とする場合には、契約で月額などの報酬を定めることがあります。
具体的な金額は専門家や契約内容によって異なるため、契約前に月額報酬と追加費用の有無を確認することが重要です。
任意後見監督人の報酬も必要
任意後見制度の費用で、特に見落としやすいのが任意後見監督人への報酬です。
任意後見制度では、本人の判断能力が低下して制度を実際に開始するとき、家庭裁判所が任意後見監督人を選任します。
任意後見監督人は、
任意後見人が契約どおり適切に仕事をしているかをチェックする役割
を担います。
任意後見人から財産目録などの報告を受け、家庭裁判所へ報告するなどして任意後見人を監督します。
そして、任意後見監督人から報酬請求があった場合には、家庭裁判所が報酬額を決定し、本人の財産から支払われます。
任意後見人の報酬と違い、本人と監督人の話し合いだけで自由に金額を決めるものではありません。
任意後見監督人の報酬はいくら?横浜家庭裁判所の目安
藤沢市で任意後見制度を検討している方にとって参考になるのが、横浜家庭裁判所が公表している報酬額の目安です。
2025年4月1日付の横浜家庭裁判所の資料では、任意後見監督人について、通常の監督事務を行った場合の標準的な基本報酬の目安を次のように示しています。
| 管理財産額 | 基本報酬の目安 |
|---|---|
| 5,000万円以下 | 月額1万円~2万円 |
| 5,000万円超 | 月額2万5,000円~3万円 |
任意後見監督人についても成年後見監督人と同じ目安が適用されるとされています。
たとえば月額1万円なら年間12万円、月額2万円なら年間24万円です。
任意後見が10年間続けば、単純計算では120万円~240万円になります。
ただし、これはあくまで標準的な目安です。
実際の報酬額は、
- 管理する財産額
- 監督事務の内容
- 事務の難しさ
- その他個別の事情
などを考慮して家庭裁判所が決定します。
特別に難しい事務があった場合には、付加報酬が認められることもあります。
したがって、
「任意後見監督人は必ず月○万円」
と決まっているわけではありません。
任意後見を開始するときにも申立費用がかかる
本人の判断能力が低下し、任意後見を開始するときには、家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立てを行います。
2026年現在、裁判所が案内している基本的な申立費用は、
- 申立手数料:収入印紙 800円
- 後見登記手数料:収入印紙 1,400円
- 連絡用の郵便料:裁判所によって異なる
です。
また、本人の判断能力を確認するために鑑定が必要になった場合には、別途鑑定費用が発生することがあります。
任意後見ではいつから毎月の費用が発生する?
ここは混同しやすいところです。
任意後見契約を結んだからといって、すぐに任意後見人や任意後見監督人が活動を始めるわけではありません。
たとえば60歳で任意後見契約を結び、その後20年間判断能力に問題がなければ、その間は任意後見自体は発効しません。
基本的な流れは、
① 元気なうち
任意後見契約を締結
↓
公正証書作成・登記等の初期費用
② 判断能力が低下
家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申立て
↓
申立費用
③ 任意後見監督人が選任される
任意後見契約が発効
↓
任意後見人への報酬(契約で定めている場合)
+
任意後見監督人への報酬
となります。
この違いを理解しておくことが、費用を考えるうえではとても重要です。
任意後見の費用は「初期費用」だけで判断しない
任意後見について調べていると、
「公正証書の作成費用はいくら?」
という初期費用に目が行きがちです。
しかし、実際に家計への影響が大きくなりやすいのは、任意後見が始まった後です。
たとえば、
- 任意後見人への月額報酬
- 任意後見監督人への報酬
が長期間続く可能性があります。
そのため任意後見を検討するときには、
契約時にいくらかかるか
だけではなく、
任意後見が始まった後、何年間くらい費用が続く可能性があるのか
まで考えておくことが大切です。
費用だけで任意後見を選ばないことも大切
ここまで費用について説明しましたが、
「高いから使わない」
「親族なら無料だから親族にお願いする」
という金額だけの判断もおすすめできません。
任意後見で一番重要なのは、
本人が判断できなくなったときに、誰に、何を任せたいのか
です。
たとえば、
- 財産管理を誰にお願いしたいか
- 介護サービスの契約を誰にお願いしたいか
- 施設への入所手続きを誰に任せたいか
- 不動産の管理をどうしたいか
- 家族の負担をどこまで減らしたいか
などを考えたうえで制度を設計する必要があります。
特に親族を任意後見人にする場合には、
「頼める人がいるか」だけでなく「継続的にその役割を担えるか」
まで考えておきましょう。
任意後見だけでなく他の準備を組み合わせることもある
任意後見は、本人の判断能力が低下した後の支援に備える制度です。
一方で、
「今から財産管理を手伝ってほしい」
「亡くなった後の手続きも任せたい」
「財産を誰に引き継がせるか決めたい」
という希望は、任意後見だけでは十分に対応できない場合があります。
その場合、
- 財産管理等委任契約
- 死後事務委任契約
- 遺言書
などを組み合わせて検討することがあります。
つまり、
今 → 判断能力が低下した後 → 亡くなった後
まで時系列で整理して、必要な準備を選ぶことが大切です。
よくある質問
家族を任意後見人にすれば無料ですか?
任意後見人への報酬を無報酬とする契約は可能です。
ただし、任意後見が発効した後は家庭裁判所によって任意後見監督人が選任され、監督人から報酬請求があれば家庭裁判所が報酬額を決定します。
そのため、家族が任意後見人だから任意後見全体の維持費が0円になるとは限りません。
任意後見監督人を付けないことはできますか?
任意後見契約を発効させるには、家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必要です。
監督人が選任されて初めて任意後見人としての仕事が開始します。
任意後見契約をしたらすぐ報酬が発生しますか?
任意後見人への報酬については契約内容によります。
任意後見そのものは、本人の判断能力が低下し、任意後見監督人が選任されて初めて効力が生じます。
契約時から見守りや財産管理を依頼したい場合には、任意後見契約とは別の契約を組み合わせることがあります。
まとめ|任意後見の費用は「契約時」と「開始後」を分けて考えよう
任意後見にかかる費用は、大きく3つに分けて考えるとわかりやすくなります。
① 任意後見契約を結ぶとき
公正証書作成手数料、登記費用、郵送費など。
② 任意後見が始まるとき
家庭裁判所への任意後見監督人選任の申立費用など。
③ 任意後見が始まった後
任意後見人への報酬と、任意後見監督人への報酬。
特に任意後見監督人への報酬は継続して発生する可能性があるため、契約時の費用だけでなく、将来的な総額まで考えて制度を検討することが大切です。
一方で、任意後見は単なる財産管理の仕組みではありません。
「認知症などで自分で判断するのが難しくなったとき、誰に自分の生活を支えてほしいか」
を元気なうちに自分で決められる制度でもあります。
費用と制度の両方を理解したうえで、ご自身やご家族に合った準備を考えてみましょう。
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「任意後見を利用した方がよいのかわからない」
「結局どのくらい費用がかかるのか整理したい」
という段階からでも大丈夫です。
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