後見人と家族信託、何が違う?認知症に備える2つの制度をわかりやすく解説

家族信託と後見の比較を表す比較 未分類

「どちらが良いか」ではなく「何のために使うか」

<span class="fz-22px">相談者</span>
相談者

親が認知機能が低下していて親の持っている不動産の管理していくうえで、後見人と家族信託、どっちがいいんですか

<span class="fz-28px"><span class="fz-24px">行政書士</span></span>
行政書士

結論からお伝えすると、この2つは優劣で比べるものではなく、それぞれ役割が異なる制度です。

どちらか一方を選ぶというより、目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりするのが実務上の考え方に近いです。

この記事では、後見制度(とくに任意後見)と家族信託、それぞれの仕組みと違いを整理します。

後見制度

後見制度は、判断能力が不十分な方に代わって、後見人が財産管理や契約などの法律行為を行
う制度です。大きく2種類あります。

  • 法定後見:すでに判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選任する制度
  • 任意後見:判断能力があるうちに、あらかじめ「誰に後見人になってもらうか」を自分で契約で決めておく制度

任意後見の場合、実際に判断能力が低下した段階で家庭裁判所に申立てを行い、任意後見監督
人が選任されることで契約の効力が生じます。

後見制度でできること

  • 預貯金の管理、支払いの代行
  • 不動産の管理・処分(家庭裁判所や後見監督人の関与あり)
  • 介護施設の入所契約、医療費の支払いなどの身上保護
  • 本人に不利益な契約を後から取り消す(法定後見の場合)

とくに身上保護(生活・医療・介護に関する契約や手続き)は、後見制度ならではの機能です。施設入所の契約や、介護保険サービスの利用契約など、本人の生活そのものを支える場面で力を発揮します。

後見制度の注意点

  • 家庭裁判所の監督下に置かれるため、財産の使い道に制約がある                 (本人の利益のためにしか使えない)
  • 法定後見の場合、後見人を家族以外の専門職(弁護士・司法書士等)が選任されることもある
  • 一度始まると、本人が亡くなるまで基本的に途中でやめられない
  • 「積極的な資産運用」や「相続税対策としての生前贈与」など、本人の利益に直接つながりにくい財産活用は基本的にできない

家族信託とは

家族信託は、自分の財産の管理を、信頼できる家族(受託者)に託す仕組みです。「委託者(財産を託す人)」「受託者(財産を管理する人)」「受益者(利益を受け取る人)」を契約で定め、あらかじめ決めた目的の範囲内で、受託者が財産を管理・運用・処分します。

たとえば「親(委託者・受益者)の所有するアパートを、子(受託者)が管理・売却できるようにしておく」といった形で使われます。

家族信託でできること

  • 判断能力が低下した後も、契約で定めた範囲内で不動産の管理・売却・建て替えなどが  可能
  • 「委託者が亡くなった後は誰に財産を引き継ぐか」まで、信託契約の中で指定できる (数次相続への対応)
  • 家庭裁判所の関与を受けずに、家族の判断で柔軟に財産を動かせる

とくに、収益不動産の管理や、将来の売却を見据えている場合に活用されることが多い制度です。

家族信託の注意点

  • 身上保護の機能はない(施設入所契約や医療同意などは信託ではカバーできない)
  • 信頼して財産管理を託せる家族(受託者)がいることが前提
  • 契約書の設計に専門知識が必要で、設計を誤ると税務上のリスクや、想定外の相続トラブルにつながることがある
  • 財産管理を監督する公的な仕組みがないため、受託者と他の家族との間で不信感が生まれることもある

後見制度と家族信託、何が根本的に違うのか

後見制度(任意後見)家族信託
目的本人の生活・財産を守る財産の柔軟な管理・承継
身上保護できるできない
財産の積極的な活用制約が大きい契約範囲内で柔軟に可能
開始のタイミング判断能力低下後(監督人選任時)契約時からすぐに管理を移せる
公的な監督家庭裁判所・後見監督人基本的になし
財産承継の指定できない数次にわたって指定可能

どう使い分ける・組み合わせるか

実務では、次のような考え方で整理することが多いです。

  • 身上保護(施設入所、医療同意的な場面での対応)が心配な方 → 任意後見が中心になる
  • 収益不動産があり、将来の売却や管理を柔軟にしておきたい方 → 家族信託が向いている
  • 両方の心配がある方 → 家族信託で財産管理の部分をカバーしつつ、身上保護の部分は任意後見で補う「併用」も選択肢

「親なきあと」対策として障がいのあるお子様の生活を支える場面でも、

財産管理は信託で、生活・医療面の支援は後見でという組み合わせが検討されることがあります。

まとめ

後見制度と家族信託は、どちらが優れているという話ではなく、「生活を守る仕組み」と 「財産を動かす仕組み」という、目的の異なる制度です。ご本人・ご家族の状況(不動産の有無、身上保護の必要性、信頼できる受託者がいるかなど)によって、最適な組み合わせは変わってきます。

当事務所では、薬剤師・ケアマネジャーとしての現場経験もふまえ、ご本人の生活状況や今後想定される医療・介護の場面まで伺いながら、後見と信託のどちらが、あるいはどちらの組み合わせが合っているかをご一緒に整理しています。「うちの場合はどっちだろう」と迷われている方は、お気軽にご相談ください。

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